「善玉」「悪玉」の意外なルーツに迫る
2024年12月27日に放送されたNHK総合「チコちゃんに叱られる!」では、「善玉」「悪玉」という言葉のルーツについて紹介されました。この言葉は、江戸時代に描かれた風刺漫画『心学早染草(しんがくはやそめぐさ)』に由来しており、善悪を象徴するキャラクターとして登場しました。専門家による詳細な解説や、この漫画が持つ歴史的背景、そして社会への影響が深掘りされ、視聴者に新たな発見をもたらしました。
今では、「善玉」「悪玉」は芝居や映画などでも使われるようになり、「善玉」は善人の役、「悪玉」は悪人の役を言う。 また、「善玉」は良い作用を及ぼすものという意味で「善玉コルステロール」「善玉菌」などと言い、「悪玉」はその逆の意味で「悪玉コレステロール」「悪玉菌」などの形で使われるようになっている。2019/04/01
■ 江戸時代に描かれた「善玉」と「悪玉」
善玉と悪玉のキャラクター
「善玉」と「悪玉」は、それぞれ以下のような象徴的なキャラクターとして描かれました。
- 善玉(ぜんだま): 正義や徳を象徴し、倫理的で正しい行動を推奨する存在。人々の道徳心や倫理観を育てるために描かれたキャラクター。
- 悪玉(あくだま): 不道徳や悪行を象徴し、社会に潜む悪事や問題を批判的に描くキャラクター。悪玉の行動は、その後の悪影響や悲劇的な結末を通じて教訓を与える役割を担っていました。
このキャラクターたちは、当時の庶民にとって分かりやすい「善」と「悪」の象徴として親しまれ、日常生活の中で道徳教育に役立てられたと考えられます。
『心学早染草』の背景
『心学早染草』は、江戸時代の学問「心学」を基盤とした風刺漫画です。心学は、石田梅岩によって広められた庶民向けの学問で、人々の日常生活に根ざした倫理観や道徳の普及を目指していました。この漫画では、当時の社会における矛盾や問題点を善玉と悪玉というキャラクターを用いて視覚的に描き、教育的なメッセージを庶民に伝える手段として活用されました。
漫画に込められたメッセージは、単なる娯楽ではなく、庶民の生活や社会の課題を改善しようとする意図が強く表れています。
■ 「悪玉踊り」とは?江戸の風刺文化
悪玉踊りの再現
放送では、専門家が「悪玉踊り」の再現を試みた様子が紹介されました。「悪玉踊り」とは、『心学早染草』に登場する「悪玉」を題材にした踊りで、当時の江戸の庶民文化の中で広まった風刺的な表現の一つです。
庶民文化に根差した風刺
江戸時代の庶民文化では、風刺や諷刺がエンターテインメントの一環として楽しまれていました。踊りや芝居、漫画などの形で社会の矛盾や問題を指摘しながら、人々に笑いと教訓を届ける役割を果たしていました。「悪玉踊り」もその一環であり、庶民が抱える社会問題を笑いに昇華しながら批判的に見つめる手段だったと言えます。
■ 社会への影響と『心学早染草』の販売中止
漫画の社会的影響
『心学早染草』は当時、多くの庶民に読まれ人気を博しましたが、風刺が当時の権力者や社会構造への批判と捉えられることがありました。そのため、影響力の強さが問題視され、最終的には販売が中止される事態となりました。
規制の背景
江戸時代には、風刺や批判が過剰になると、当局によって厳しい規制がかけられることが一般的でした。漫画や芝居が社会の不正や矛盾を取り上げること自体は評価されましたが、内容が権力批判や社会秩序の乱れにつながると見なされた場合、発禁処分が下されるケースも少なくありませんでした。『心学早染草』も例外ではなく、庶民の間での影響力が大きすぎると判断され販売中止となりました。
■ 現代に受け継がれる「善玉」「悪玉」の概念
健康用語への転用
「善玉」と「悪玉」という言葉は、現代でも広く使われています。特に健康分野では、「善玉菌」や「悪玉菌」といった言葉が腸内環境や健康管理の話題でよく使われており、善悪の象徴として根付いています。これらの用語の背景には、江戸時代に生まれたキャラクターの影響が色濃く反映されていると言えるでしょう。
歴史的意義
『心学早染草』を通じて表現された善玉と悪玉の概念は、単なるキャラクターにとどまらず、日本文化や社会に深く根差しています。このような作品を研究することで、江戸時代の庶民文化や倫理観、社会構造の理解が深まるとともに、現代における文化的価値観を再確認する機会ともなります。
■ まとめ
江戸時代の風刺漫画『心学早染草』に由来する「善玉」と「悪玉」という言葉は、当時の庶民文化に大きな影響を与え、現代においてもその概念が広く受け継がれています。風刺や教訓を通じて庶民にメッセージを届けたこの作品は、歴史的な価値を持つ重要な資料と言えるでしょう。現代に生きる私たちにとっても、こうした背景を知ることで、善悪を考えるきっかけとなり、社会や文化への理解を深める糸口となります。
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