【NHKあさイチ】能登半島地震が浮き彫りにする日本社会の課題｜2024年12月16日放送

能登半島地震が日本社会に突きつけた現実

能登半島地震が日本社会に突きつけた現実

2024年12月16日、NHK総合「あさイチ」では能登半島地震から1年が経過した現地の状況を特集しました。過疎化や高齢化が進む中で発生した震災は、地域の現状をさらに厳しいものとし、復興が思うように進まない現実が浮き彫りになっています。被災地では、公費解体の遅れや金銭的な課題が問題となり、多くの住民が生活再建に苦しんでいます。この記事では番組内容をもとに、復興の遅れの原因と現地の声を詳しく解説し、地域再生への道筋を探ります。

能登半島地震から1年復興が進まない理由とは

仮設住宅で暮らす被災者の現状

能登半島地震から1年が経過しましたが、多くの被災者は未だに仮設住宅での生活を余儀なくされています。仮設住宅は一時的な避難場所としての役割を果たしていますが、住環境は必ずしも快適ではなく、長期間の生活に適していないことが課題となっています。寒冷な気候や狭い居住空間での生活が続き、住民の心身に与える影響も懸念されています。

寒冷地の生活の困難：特に冬季には暖房費の負担が増え、生活費全体が圧迫される。
プライバシーの欠如：狭い空間での共同生活により、精神的ストレスを抱える人が多い。

自宅再建を諦める人々

被災地では、自宅再建を諦めざるを得ない住民が増えています。特に高齢者にとって、再建にかかる費用や体力の負担は大きく、「これ以上の負担を抱える意味がない」と考える人も少なくありません。

再建費用の高さ：家屋の修理や再建には数百万円以上が必要となり、経済的に困難な家庭が多い。
高齢者特有の課題：高齢の被災者にとって、再建後の生活を長期的に見通すことが難しい。

地域社会が抱える構造的な課題

能登半島は以前から過疎化と高齢化が進行しており、震災がその問題をさらに深刻化させました。地元に若い世代が少なく、復興を支える人材が不足していることが、地域再建の遅れにつながっています。

人口減少の現実：震災前から人口流出が続き、若年層がほとんどいない地域も存在。
高齢化率の高さ：奥能登地域では高齢化率が50％を超えており、全国平均を大きく上回る。

日本社会全体の課題を映し出す能登半島地震

能登半島地震で浮き彫りになったのは、地方社会が直面している構造的な課題です。高齢化や過疎化が進む中で災害が発生すると、地域全体の再建が困難になるという現実が浮き彫りになりました。この現状は能登だけでなく、他の地方都市や地域にも共通する課題といえます。

全国的な課題との関連：能登半島の現状は、全国的に広がる人口減少や高齢化の縮図。
復興支援の必要性：地域特有の課題に対応した支援体制の構築が求められている。

今後の復興に向けて必要な視点

能登半島地震から1年が経過した現在、復興の遅れを取り戻すには、地域社会の課題を解決するための新たな取り組みが求められています。行政や地域住民、そして全国からの支援を結集し、持続可能な再建計画を進めることが重要です。

行政と住民の連携：被災者の声を反映した柔軟な復興支援策の構築。
地域資源の活用：地元の特産品や観光資源を活かした産業の活性化。
外部からの支援強化：専門家やボランティアによる技術的・物理的な支援の充実。

能登半島地震から1年復興が進まない理由と日本社会の縮図

人口減少と高齢化が進む能登半島

能登半島は長年、人口減少と高齢化が進む地域として知られており、特に奥能登ではその傾向が顕著です。高齢化率が約50％にも達する奥能登地域は、全国的な課題である少子高齢化の典型的な事例として挙げられます。全国でも約8割の地域で人口が減少しており、能登半島の現状は「日本社会の縮図」として他の地域にとっても他人事ではありません。

人口減少の要因：若年層の都市部への流出により、地域の担い手が減少。
高齢化の影響：地域を支える労働力不足や社会インフラの維持が困難。
全国への影響：能登の状況は、他の地方都市や地域が直面している課題を象徴している。

能登半島地震がもたらした深刻な被害

2023年に発生した能登半島地震は、死者475人、災害関連死247人という甚大な被害をもたらしました。これは東日本大震災以降で最も多い犠牲者数を記録した災害です。地震の規模だけでなく、その後の生活再建の遅れが被災者にさらなる苦難を与えています。

直接的な被害：住宅の倒壊、インフラの破壊により多くの住民が避難を余儀なくされた。
災害関連死の多発：仮設住宅での生活や支援の不足が間接的な死因となっている。
復興の遅れ：被害の大きさに対して行政の対応が追いつかず、住民の生活再建が進まない。

被災者の生活再建を阻む「お金の悩み」

震災後、最も大きな課題の一つとして挙げられるのが「お金の問題」です。家屋の修復や再建にかかる莫大な費用、公的支援制度の条件の厳しさなどが、被災者の生活再建を大きく阻んでいます。特に、一部損壊と判定された家庭は支援金を受け取ることができず、自費での修理が必要となります。

修理費用の負担：多くの家庭で住宅修理費用が数十万円から数百万円にのぼり、経済的に困難。
支援制度の不備：被災者生活再建支援金が一部の条件を満たした家庭にしか支給されないため、多くの住民が対象外となる。
高齢者の負担：高齢世帯では収入源が限られ、支援が得られない状況でさらに苦しい生活を強いられる。

全国的な課題としての能登半島地震

能登半島地震は地方が抱える課題を全国に示す重要な事例となりました。災害の被害を最小限に抑えるための事前の対策や、災害後の迅速な支援体制の構築が求められています。能登半島の現状は、災害が多発する日本社会において警鐘を鳴らす存在といえるでしょう。

事前対策の重要性：人口減少地域における防災対策の見直しと強化が急務。
支援体制の構築：国や自治体が連携し、迅速で柔軟な支援を行う仕組みが必要。
他地域への教訓：能登での経験を他の地方に活かし、同様の問題を未然に防ぐ取り組みが求められる。

今後の復興への道筋

能登半島地震の復興には、単なる物理的な再建だけでなく、地域の活力を取り戻すための新しい取り組みが必要です。地域資源を活用した産業の活性化や移住促進など、能登が持つ魅力を再発見し、地域社会全体の再生を目指すことが求められます。

地元産業の活性化：農業や観光業を基盤とした地域再生。
若者の定住促進：移住者向けの支援制度や働きやすい環境の整備。
住民の結束：被災者同士のつながりを強化し、共同で復興を進めるための仕組み作り。

能登半島地震から1年「お金の悩み」に直面する被災者たち

善家さん夫妻が直面する修理費用の壁

能登半島地震で自宅が被害を受けた善家さん夫妻は、修理にかかる費用の高さに頭を抱えています。家の修理費用は見積もりで40～80万円にのぼり、特に屋根の修理代として提示された80万円は家計にとって大きな負担となっています。震災による被害が直接的な出費を増やす中で、収入の限られる世帯にとって、このような高額な修理費用は非常に厳しいものです。

修理費用の現実：屋根や床の修復に必要な金額は、一般的な家庭が簡単に用意できるものではない。
経済的な困難：生活費の捻出だけで手一杯の状況で、高額な修理費用が家計を圧迫。

支援の壁となる罹災証明書の「一部損壊」判定

善家さんの家庭は罹災証明書で「一部損壊」と判定されました。この結果、被災者生活再建支援金を受け取ることができず、修理費用を自力で賄わなければならない状況に追い込まれています。一部損壊は制度上「軽微な被害」と見なされることが多いですが、実際には生活に重大な影響を及ぼしているケースが多々あります。

一部損壊の問題：被害の実情が評価されないことで、公的支援が受けられない家庭が続出。
支援制度の改善点：被災者の声を反映した柔軟な支援制度の必要性が浮き彫りに。

床の傾きが生活に与える深刻な影響

善家さん夫妻の家では、地割れが家をまたいで発生し、床が約34ミリ傾いていることが業者の調査で判明しました。この傾きは住民の健康に影響を与える可能性がある深刻な状態です。夫婦は床の傾きに対応するため、座布団を工夫して敷き、その上で寝ざるを得ないと話しています。

人体への影響：長期間、不自然な姿勢で生活することは腰痛や関節の問題を引き起こす可能性がある。
生活の質の低下：不安定な家屋での生活は、心身ともに被災者の負担を増大させる。

NPOの支援活動と被災者への寄り添い

NPO法人YNFの江崎さんは、多くの被災者が罹災証明書の申請や修理の相談に行けない現状を指摘し、積極的に被災者のもとに出向いて支援を行う必要性を強調しています。特に高齢者や移動が困難な人々にとって、このような直接的な支援は非常に重要です。

出向く支援の重要性：被災者が必要な情報を得られない状況を改善するためには、支援側が行動する姿勢が求められる。
地域コミュニティの役割：地元住民や支援者との連携を強化し、被災者が孤立しない環境を作ることが必要。

「お金の悩み」を超えて復興を目指すために

善家さん夫妻のようなケースは、能登半島地震の被災地で多く見られる現実です。高額な修理費用や支援の不備、そして生活環境の悪化に直面する被災者を救うためには、行政やNPO、地域社会が一丸となった取り組みが求められます。被災者一人ひとりの声に耳を傾け、その状況に応じた柔軟な支援策を講じることが、復興への第一歩となるでしょう。

公費解体が進まない理由｜7カ月を経て始まった中村さんのケース

7カ月後に始まった解体作業

先月下旬、能登半島地震で被災した中村和子さんの自宅で、ようやく公費解体の作業が始まりました。申請から解体作業が始まるまでに7カ月を要し、その間、中村さんは壊れた家を見ながら生活を続けざるを得ませんでした。作業が始まったことで、ようやく一歩を踏み出せる兆しが見えたものの、長い待ち時間が住民に与える心理的負担は計り知れません。

中村さんの心情：「家がなくなって、ちょっと前に進めるかな」と安堵を見せる一方、もっと早く始まっていればとの思いもある。
心理的負担：被災者が壊れた家を目にする時間が長いほど、復興への意欲が薄れてしまう可能性がある。

公費解体の遅れを引き起こす要因

公費解体が進まない理由として、行政機関の対応が指摘されています。特に、輪島市役所では応援職員が不足している状況が続いており、解体作業の申請処理に大幅な遅れが生じています。

応援職員の不足：輪島市役所全体では101人の応援職員が必要とされていますが、現時点で21人が不足している。
派遣調整の課題：石川県は「職員の確保はできているが、個々の事情により派遣時期が不確定」と説明しており、現場での迅速な対応が難しい状況にある。

国や県の対応のずれ

国や県の対応が不十分であることも、解体作業の遅れを引き起こしている要因の一つです。総務省は「国と県で応援職員の調整を済ませた」と回答する一方で、輪島市への具体的な派遣計画が明確になっていない点が課題となっています。このような「ちぐはぐ」な対応により、最終的な負担が被災者に押し付けられているとの懸念が広がっています。

田中氏の指摘：「国や県の対応がちぐはぐで、そのしわ寄せが被災者に及んでいる」とコメント。
迅速な支援体制の必要性：被災者を中心に据えた柔軟な対応が求められる。

環境省の認識と目標

環境省は、公費解体について「現時点では計画値を上回るペース」と認識しており、2025年10月までに解体作業を完了させる支援を進めるとしています。しかし、住民の立場からすると、この「計画値を上回るペース」という認識が実際の体感とは大きく異なる場合もあり、さらなる改善が必要です。

計画の進行状況：環境省の主張する進捗は、被災者の期待と実感の間に大きなギャップがある。
目標達成への課題：手続きの煩雑さや応援職員不足が解決されない限り、計画通りの進行が難しい可能性がある。

手続きの簡素化と罹災判定の改善が必要

田中氏は、公費解体の手続きを簡素化し、住民がより利用しやすい仕組みを整えるべきと指摘しています。また、罹災証明書の判定基準を見直し、住民の実情を反映した柔軟な対応を行うことが必要です。

手続き簡素化の提案：住民が煩雑な手続きを負担することなく、支援を受けられる仕組みを作るべき。
丁寧な罹災判定：一部損壊と判定された住民のニーズにも目を向け、適切な支援を提供する必要がある。

公費解体を通じた復興への一歩

中村さんのように、壊れた家が解体されることで「前に進める」と感じる被災者は多いです。公費解体が迅速に進むことは、物理的な復興だけでなく、心理的な負担の軽減にもつながります。行政の対応改善と住民の声を反映した柔軟な仕組みが、復興を加速させる鍵となるでしょう。

公費解体を終える地域新たな課題に直面

下唐川地区で進む公費解体とその現状

石川県穴水町の下唐川地区では、震災前には31世帯・70人が暮らしていましたが、地震後に多くの家屋が被害を受けました。現在までに20軒の公費解体が完了し、年内にはすべての解体が終了する予定です。解体が進むことで、地域の再建に向けた第一歩が踏み出されたものの、課題はまだ山積しています。

公費解体の進捗：地域内での解体作業が順調に進みつつある。
残された課題：解体後の土地利用や住民の生活再建が次なる大きな課題となっている。

自宅再建に踏み切った住民と諦めた住民

区長の加代等さんは、自宅の再建を決断し、既に工事が始まっています。しかし、同じ地域の住民全員が同じ道を選んでいるわけではありません。高齢者を中心に、自力での再建を諦めた人も少なくなく、仮設住宅での生活を継続しているケースが目立ちます。

再建を決断した人：加代さんのように、再建に向けた資金や計画を持つ一部の住民。
再建を諦めた人：左部淳一さんのように、収入が年金のみの高齢者は再建を選択できず、仮設住宅や別の生活環境を模索している。

変わりゆく集落の風景と住民の苦悩

地震前の下唐川地区は、自然に囲まれた原風景が特徴的な集落でした。しかし、地震後に多くの家が解体され、景観は大きく変化しています。特に、自宅の再建を諦めた住民が多いことから、かつての賑わいを取り戻すのは難しいと感じる住民もいます。

景観の変化：解体された土地が更地のまま残されるケースが増え、集落の雰囲気が大きく変わった。
住民の苦悩：再建を諦める選択をした人々が抱える喪失感や孤独感。

専門家の提案と熊本地震からの教訓

下唐川地区では、住民と建築の専門家が参加する検討会が開かれました。この中で、更地になった土地をコンクリート舗装する案や、かつての原風景を保ちながら復興を進める難しさが議論されました。専門家は平成28年熊本地震の経験を基に、景観を残しつつ再建を進める方法の重要性を指摘しています。

コンクリート舗装の提案：土地を有効活用するための具体的な手法として挙げられた。
熊本地震の教訓：景観を保ちながら復興を進めるためには、住民の声を反映した柔軟な計画が不可欠。

地域再生のヒントとなる住民の手作り通信

下唐川地区では、区長が中心となって住民向けの手作り通信を発行しています。この通信は2～3日に1回というハイペースで発行され、地域の情報共有や住民同士のつながりを保つ重要な役割を果たしています。

通信の内容：飲水の基準に関する情報や住民懇談イベントの案内など、生活に密着した情報が提供されている。
地域の結束：通信を通じて住民間の交流が促進され、孤立を防ぐ役割を担っている。

下唐川地区が抱える今後の課題

解体作業が進む中で、下唐川地区が抱える課題は土地利用やコミュニティ再建の段階に移りつつあります。住民が一丸となり、専門家の支援を受けながら、持続可能な地域再生を目指す取り組みが求められています。

土地利用の計画：解体後の更地をどのように活用するかが重要な課題。
コミュニティの再建：地域のつながりを維持しながら、住民が安心して暮らせる環境を整備する必要性。

自力での再建を諦める人も｜変わる集落の風景と地域再生のヒント

自力再建を諦める住民の増加とその影響

下唐川地区では、自力での再建を諦める住民が増えています。高齢化や収入の制限、また精神的な疲労が主な要因となっており、多くの人が仮設住宅や別の生活環境を選択せざるを得ない状況です。これにより、かつての賑わいを取り戻すことが難しく、地域全体の景観や活気にも大きな影響を与えています。

高齢者の選択：再建を断念する背景には、年金生活の厳しさや体力的な問題がある。
集落の変化：かつての原風景が失われつつあり、住民の精神的喪失感が拡大している。

手作り通信が地域をつなぐ役割

下唐川地区では、区長が発行する手作り通信が地域再生の一助となっています。2～3日に1回の頻度で発行されるこの通信は、生活に役立つ情報やイベントの案内を含み、住民同士のつながりを維持するために重要な役割を果たしています。

飲水の基準を周知：水道が飲水基準に適さないため、井戸水の活用を住民に呼びかける内容が掲載されている。
懇談イベントの案内：地域の住民が集まり意見交換を行う場を提供し、孤立感を防ぐ効果がある。
継続的な情報発信：頻繁な発行が住民の生活に密着した情報共有を可能にしている。

専門家が提案する地域再生のヒント

田中純一教授（福岡大学）は、地域再生の鍵は「平時からの準備」と「住民の声を反映した柔軟な対応」にあると指摘しています。復興作業において、住民と行政の間で優先順位がずれることが多いため、ボランティアや専門家が橋渡し役を担うことで、地域に寄り添った支援が可能になるといいます。

地域の強みの把握：「復興プランを立てる際には、地域独自の特性や資源を活かすことが重要」との提案。
住民の声の重要性：行政が見落としがちな住民のニーズを拾い上げる取り組みが必要。
ボランティアの役割：地域の復興を支援し、住民が故郷を離れずに済む環境を作る。

まだまだ必要なボランティア活動

被災地では、復興が進む中でもボランティアの存在が不可欠です。下唐川地区では、生活に密着した支援や専門的なアドバイスを求める声が多く聞かれます。住民だけでは解決が難しい問題に対して、ボランティアが外部からの力を提供することで、復興が加速します。

地域に根ざした支援：飲水基準の改善や土地利用の相談など、生活に直結する支援活動。
専門知識の提供：建築や環境改善に関する専門的なアドバイスが住民の助けになる。
継続的な支援の必要性：一時的な支援ではなく、長期的な視点でのボランティア活動が求められる。

地域再生への期待

手作り通信や住民懇談会といった取り組みは、地域再生の基盤となる可能性を秘めています。被災者一人ひとりの声を拾い上げ、住民が主体となる復興を進めることが、集落の活気を取り戻す第一歩です。行政、ボランティア、住民が一体となり、共に歩むことで、下唐川地区の未来が少しずつ形作られていくでしょう。

■ まとめ

能登半島地震は、過疎化と高齢化が進む地域における災害対応の課題を浮き彫りにしました。復興の遅れには、行政の対応不足や支援制度の不備が絡んでおり、被災者の生活再建を阻む要因となっています。一方で、地域資源を活用した再生の可能性や住民と専門家の協力が、復興への希望を示しています。