和歌山の崖の前に佇む「ポツンと一軒家」〜険しい自然に向き合いながら暮らす農家夫婦の物語
2024年11月10日放送の『ポツンと一軒家』では、和歌山県の山奥で生活する安幸さんとまさ代さんの夫婦にスポットが当てられました。崖のすぐそばに立つ築100年以上の古民家で、二人は大自然に囲まれた厳しい環境の中でも笑顔を絶やさず、地域の人々と支え合いながら静かに暮らしています。家族とのつながりや長年の工夫が詰まったこの家には、日本の田舎の魅力と夫婦の強い絆が溢れています。
険しい山道と崖の先に見つけた安らぎの場所「終の住処」としてのこの一軒家には、時の流れが刻まれ、夫婦の努力と知恵が詰まった生活の工夫が随所に見られます。かつては果樹園を営んでいた段々畑や、自然の水源を利用した水道システムなど、時代の変化と共に変わってきた田舎の生活が垣間見えます。
【人生の楽園】夫婦で営む合掌造りカフェ「かふぇ このはずく」|愛知・新城市の心温まるストーリー2024年11月9日放送
和歌山の山奥で発見された100年続く家の歴史と魅力
衛星写真に見えた「森に埋もれる家」
今回の『ポツンと一軒家』では、和歌山県の奥深い山の中で一軒の古民家が発見されました。衛星写真に映し出されたのは、森に埋もれているように見える屋根だけで、自然の中に溶け込むように佇んでいる一軒家です。険しい山道を車で進む調査チームは、車がギリギリ通れるほどの細い道を通り抜け、ようやくこの家に到達しました。この場所は普段、人の出入りがほとんどない秘境とも呼べるような地で、そんな山奥で安幸さんとまさ代さん夫婦がひっそりと生活を続けています。
100年以上続く家と家族の歴史
安幸さんが住むこの家は、築100年以上の歴史を誇り、彼が生まれ育った生家でもあります。彼の家族が代々住んできたこの家は、家族の記憶や地元の歴史を体現しており、まさに地域のシンボルのような存在です。長い年月の中で幾度かの改修が行われながらも、家はその原型をしっかりと保っており、土間には昔ながらの三和土(たたき)が今も残っています。また、竿縁天井(さおぶちてんじょう)は、木の竿を等間隔に並べた美しいデザインが特徴で、日本の伝統的な建築様式が随所に活かされています。
かつて家の庭には大きな枝垂れ梅が咲き誇り、春になると辺り一面が香り高い花で彩られていました。しかし、山の斜面に位置するこの地では土砂崩れの危険性もあるため、安全を考えて枝垂れ梅を伐採することを決断したといいます。この伐採は、安幸さんと家族にとって大きな決断であり、家族の思い出と共にあった自然の一部を手放すのは心が痛むものでした。それでも、この家に暮らし続けるために必要な措置であり、夫婦は安全な生活を守るため、心を痛めつつも最善の選択をしました。
自給自足を支える農作業と日々の生活
段々畑と果樹栽培の歴史
この山奥で生活する安幸さんは、かつて斜面を開墾して段々畑を作り、果樹栽培を営んでいました。この段々畑は、急な山肌を利用して作られたもので、過酷な環境に適応しながら家族の生計を支えてきました。果樹は家族にとって重要な収入源であり、豊かな収穫期には地元の市場に出荷され、多くの人々の手に渡ったそうです。しかし、時代と共に果樹農家としての営みは終わりを迎え、段々畑も次第に森へと戻っていきました。
現在、夫婦は2キロ離れた平らな土地を借り、小規模ながらも農業を続けています。この新しい畑はもともと耕作放棄地だった場所を活用しており、地元の協力のもと再び農地として利用されるようになりました。ここで栽培されているのはきゅうりやインゲン、黒豆などの地元産の野菜で、季節に合わせて少量ながらも丁寧に育てられています。夫婦にとって、この畑は自給自足の豊かさと、田舎の自然の恵みを実感させてくれる大切な場所です。
自然の厳しさを乗り越えた夫婦の工夫と生活の知恵
山奥での水源確保と生活の工夫
安幸さんとまさ代さんが生活を続ける上で、最も重要な課題の一つが「水の確保」です。家の裏手には谷川が流れており、安幸さんはこの谷川から水を引いて生活用水を確保しています。山奥にあるため、都市部のように水道が整備されていないこの地では、谷川の水が生活の命綱となります。
水を供給するためには、まずポンプと貯水タンクが必要です。ポンプ用の電線は安幸さんが自ら配線し、ポンプの設置や水の配管までも自身の手で行いました。谷川の水をタンクに貯め、必要に応じてポンプで引き上げるこのシステムは、山の中で生活する上で欠かせない工夫の一つです。天候による影響も大きく、特に台風の際には谷川が土砂で埋まり、流れが滞ることもあります。その場合、安幸さんはホースを使って上流から清水を引き込み、タンクに取り入れるなどして柔軟に対応しています。
収穫作業と地元市場への出荷
翌朝、夫婦の畑での収穫作業が行われました。二人が愛情を込めて育てたきゅうりやインゲン、黒豆は、どれも新鮮で色鮮やかです。安幸さんとまさ代さんは収穫した野菜を一つひとつ丁寧に袋詰めし、道の駅で販売するための準備を整えます。野菜の収穫は二人にとって生活の一環であり、同時に地元の人々に自然の恵みを届けることへの喜びでもあります。
道の駅は二人の家から16キロも離れた場所にありますが、朝早くから収穫した新鮮な野菜を届けるため、ふたりはこの道のりを車で通っています。狭い山道を抜け、時には険しい坂道も越えて、収穫した野菜を届けることは決して楽なことではありません。それでも、地元の人々が新鮮な野菜を楽しみに待っていることを思えば、苦労もまた大切な使命と感じるといいます。
道の駅で並べられる野菜は、地元で評判の「美味しい野菜」として親しまれ、多くのリピーターもいます。ふたりは地元の人々に「自分たちの手で育てた作物」を提供することに誇りを感じており、地元産の食材が地域の食卓に並ぶことにやりがいを見出しています。また、市場での販売は地元との絆を深める重要な機会でもあり、顔見知りの常連客との交流やちょっとした会話も、ふたりにとってはかけがえのない時間です。
このように、夫婦は自給自足の生活を楽しみながら、地元の人々とつながりを保ち続けています。山の厳しい自然環境でありながらも、自然の恵みを享受し、地元とともに生きていく姿は、ふたりにとっての豊かさの象徴であり、田舎暮らしの魅力そのものです。
まとめ
今回の『ポツンと一軒家』では、和歌山の深い山奥で生活する安幸さんとまさ代さん夫婦の暮らしが紹介されました。崖の目の前という過酷な自然環境にありながら、夫婦は互いを支え合い、地域の助け合い精神を大切にしながら生活を続けています。自然と共に生き、地域に根ざした暮らしを守る姿には、日本の田舎が持つ豊かさと強さ、そして家族の絆が詰まっています。
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